サポート要件_課題を生じる前提要件(第3回)
前回紹介したような事例でサポート要件違反を問うことができるのか。参考になる知的財産高等裁判所の判決(平成27年(行ケ)第10026号)があります。この判決では、請求項に係る発明が、明細書から把握される課題に直面しない態様を包含することがサポート要件違反に当たると判断しています。具体的な説示は次の通り。
「そうすると、磁気検出素子の位置は、少なくとも、長尺方向の熱変形の影響により、短尺方向よりも大きく動く位置に配置される場合でなければ、訂正発明1の課題に直面することはないといえるが、訂正発明1に係る特許請求の範囲には、前記のとおり、カバーにおける磁気検出素子の位置についての特定はない。
以上によれば、訂正発明1の特許請求の範囲の特定では、訂正発明1の前提とする課題である「熱変形により縦長形状のカバーの長手方向が短尺方向に比べて寸法変化(位置ずれ)が大きくなること」に直面するか否かが不明であり、結局、上記課題自体を有するものであるか不明である。
そして、仮に、磁石と磁気検出素子とのずれが、短尺方向に大きく生じる場合においては、磁石と磁気検出素子との間のエアギャップの磁気検出方向への寸法変化は大きくなってしまうのであるから、訂正発明1の課題解決手段である「磁気検出素子をその磁気検出方向と縦長形状のカバーの長手方向が直交するよう配置」したとしても、出力変動は抑制されず、回転角の検出精度も向上しない。
よって、訂正発明1は、上記課題を認識し得ない構成を一般的に含むものであるから、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えたものであり、サポート要件を充足するものとはいえない。」
上記の知財高裁の判断によれば、請求項に係る発明のなかに目的の課題を生じない構成(態様)も包含されている場合には、サポート要件違反になり得ます。審査基準でもこのような類型が明記してあると、前回の仮想事例において乙はサポート要件違反を主張しやすくなり、また、異議申立や無効審判において乙のサポート要件違反の主張を、審判合議体が受け入れやすくなる可能性もあるのかと思います。
