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サポート要件_課題を生じる前提要件(第1回)

 特許法はサポート要件として「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること」を要求しています(36条6項1号)。サポート要件を判断するための具体的運用について審査基準はいくつかの類型に分けて説明しています。審査実務で頻繁に出会うのが、「出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない」という類型です。この類型について審査基準には次の具体例が記載されています。

 

「例4:請求項には、R受容体活性化化合物の発明が包括的に記載されている。しかし、発明の詳細な説明には、具体例として、新規なR受容体活性化化合物X、Y、Zの化学構造及び製造方法が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合」

 

「例5:請求項には、達成すべき結果により規定された発明(例えば、所望のエネルギー効率の範囲により規定されたハイブリッドカーの発明)が記載されている。しかし、発明の詳細な説明には、特定の手段による発明が記載されているのみであり、出願時の技術常識に照らしても、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合」

 

「例6:請求項には、数式又は数値を用いて規定された物(例えば、高分子組成物、プラスチックフィルム、合成繊維又はタイヤ)の発明が記載されているのに対し、発明の詳細な説明には、課題を解決するためにその数式又は数値の範囲を定めたことが記載されている。しかし、出願時の技術常識に照らしても、その数式又は数値の範囲内であれば課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されていないため、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない場合」

 

 上記具体例はいずれも、発明の詳細な説明から実質的に把握できる課題解決手段が請求項で十分に特定されているか否かの観点から、サポート要件の充足を判断するものと言えそうです。請求項に係る発明が課題を生じる構成であることが前提にあり、この前提のもとで、発明の詳細な説明から実質的に把握できる課題解決手段の請求項における特定事項が十分か否かを判断するものと解釈できます。

 サポート要件違反の別の類型として「請求項において、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求することになる」というものも審査基準に載っています。こちらも「発明の課題を解決するための手段が反映されていないため」との記載から、請求項に係る発明が課題を生じる構成であることが前提にあり、この前提のもとで、課題解決手段の特定に不足がないか判断するものと解釈できそうです。

 

 では、サポート要件の判断は上記類型ないし具体例への当てはめで足りるのか。上記の類型で処理できるとの立場を否定するものではありませんが、私見を申しますと、もう少し具体例のバリエーションが欲しいと感じます。発明の詳細な説明に記載された課題解決手段は不足なく請求項で特定されており、それゆえ課題を解決できることは認識できるけれど、請求項記載の発明の範囲が何か広い、と感じることが実際にあります。次回、仮想事例で検討します。

 

(第2回につづく)