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国内優先権_使えば安心? そうでもない審査基準の現実(第2回)

 ここから国内優先権制度の3つの利用形態について見ていきます。

 

(1つ目:実施例補充型)

 先の出願の出願日から1年以内に、実施例を補充して優先権を主張して出願するのが、実施例補充型の優先権主張出願です。

 

 先の出願X 出願日:2024年12月2日

       特許請求の範囲に記載された発明:A

       明細書に記載された実施例:α1

 後の出願Y 出願日:2025年12月2日

       特許請求の範囲に記載された発明:A

       明細書に記載された実施例:α1、α2

 

 この場合、特許請求の範囲に記載された発明「A」は、文言上は、先の出願と後の出願との間で同じです。しかし、後の出願では、発明「A」の実施例としてα2が追加されています。α2を、仮に補正によって先の出願に組み込んだ場合、通常は新規事項の追加に該当し、補正が認められません。そうすると、発明「A」は、α1の部分には優先権が認められ、新規事項であるα2の部分には優先権が認められないと考えられます。結果、発明「A」の中には新規事項を含む形態が含まれますので、発明「A」全体としても優先権が認められないことになります。

(α2がα1に対して新たな効果を奏しない場合は発明「A」全体で優先権の利益を享受できるとの見解もありますが、今回は、審査基準に忠実に、検討しています。)

 なお、発明「A」を、実施例:α1(ないしその周辺)に対応する新規事項に該当しない範囲「A1」に減縮すれば、発明A1は優先権の利益を得ることができると考えられます。

 

(2つ目:上位概念抽出型)

 上記の実施例補充型との違いは、実施例α1が発明Aの範囲内、追加した実施例α3は発明Aの範囲外です。そして、発明Aの範囲外のα3でも発明Aと同じ効果が発現したとします。この場合、発明「A」の上位概念にあたる発明Agcを抽出できることがあります。

 このような場合に利用できるのが上位概念抽出型の優先権主張出願になります。

 

 先の出願X 出願日:2024年12月2日

       特許請求の範囲に記載された発明:A

       明細書に記載された実施例:α1

 後の出願Y 出願日:2025年12月2日

       特許請求の範囲に記載された発明:Agc

       明細書に記載された実施例:α1、α3

 

 この場合、発明Agcは、Aを除く部分について優先権の利益を享受できないと考えられます。したがって、発明「Agc」全体としても優先権が認められません。

 なお、上記実施例追加型と異なり、発明「A」の実施例を追加していませんので、発明「Agc」を「A」(実施例追加型で記載した発明「A1」よりも上位概念)まで限定すれば優先権の利益は得られるものと考えられます。

 

(3つ目:発明の単一性制度利用型)

 「光源からの照明光を一部遮光する照明方法」という発明Aを完成させ、実施例α1を記載して先の出願Xを行いました。

 その後、「光源と光源からの照明光を一部遮光する遮光部を備えた照明装置」という発明Bを完成させ、これに対応する実施例β1も用意できたとします。

 この場合、発明Aが、いわゆる「先行技術に対する貢献をもたらす技術的特徴(STF)を含む」発明で、発明Aと発明BとはSTFが共通していると評価できる場合、発明の単一性(特許法第37条)を満たしていることになり、1出願に両発明を含ませて出願することができます。これが「発明の単一性制度利用型」と呼ばれるものです。

 

 先の出願X 出願日:2024年12月2日

       特許請求の範囲に記載された発明:A

       明細書に記載された実施例:α1

 後の出願Y 出願日:2025年12月2日

       特許請求の範囲に記載された発明:A、B

       明細書に記載された実施例:α1、β1

 

 この場合、補正の新規事項基準に照らして、発明Bが優先権の利益を享受できない可能性は高いでしょう。

 

 審査基準に厳密に則れば上記の結論になろうかと思います。

(第3回に続く)